良い矯正歯科医院 良い矯正歯科医の選び方(見分け方、区別)

 
初診相談にお見えになった患者様によく聞かれる質問は、「いい矯正歯科さんはどうやって見つければ良いんですか?」と言うことです。それはここです、私ですと言いたいところですが、その人にとっての善し悪しというのは、感じ方や評価の仕方が様々なので、何とも困ってしまう難しい質問です。逆に、矯正歯科の神様のような人たちがもし居たとしても、その人だけが世の中のすべてのケースを手がけるのは不可能ですから、自ずと適正な数に分散せざるを得ません。
 
ではどういう矯正歯科医院が安心して診てもらえる医院なのかと言うことを考えてみますと、10項目ほどポイントがあると思います。
 
 

1. 矯正歯科医の資格をきちんと取得している

これだけは絶対に外せないポイントだと思います。当コラム内に、矯正歯科医の資格の区別については詳しい説明がありますので、ここではその説明は省略しますが、できれば日本矯正歯科学会臨床指導医(旧専門医)に診てもらうのがよいでしょう。
日本矯正歯科学会臨床指導医(旧専門医)は、本当に厳しい基準で選ばれています。しかし、神業のようなウルトラテクニックを求められているわけではなく、矯正歯科医としてまじめに日々治療に取り組んでいれば、取得するのはそんなに困難ではないと思います。逆に言いますと、日本矯正歯科学会認定医になってから一定の年数が経っているのに、日本矯正歯科学会臨床指導医が取得できないというのは、どこかに問題点があるのかもしれません。いずれにしても、最低限日本矯正歯科学会認定医の治療を受けるべきと思います。
 
*歯学博士の有無は治療の優劣には全く関係ありません。同様に学歴も基本的に関係ないと思います。東大病院が必ずしも日本一の病院とは言えないのと同様です。
*もう一つ大事なのは、先生自身が治療していると言うことです。そんなの当たり前に聞こえますが、全部スタッフ任せで先生自身はほとんど何もしない、チェックするだけと言うところもあるようです。いくら立派な資格があっても、自分自身で診療しないなら意味がありません。
 

2. 診療日が月に半分以上はある

矯正歯科医院は通常はあまり忙しくないので(ただし土曜日はどこの医院でも混んでいると思います)、休診日が多いのが特徴です。しかしあまりにも休診日が多いと、装置が壊れたり外れたりした時の対応がなおざりにされてしまいます。
とくに、非常勤のバイトの先生が月に一度か二度治療をしているというようなやり方ですと、どうしても対応が後手後手になりますし、予約もスムーズに取れません。やはり常勤の矯正歯科医が居る医院がよいと思います。
 

3. あまりにも忙しい医院は避ける

矯正治療は期間がかかるだけでなく、一回一回の治療時間もそれなりに必要です。いらした患者様の装置と歯の全体的なクリーニングをして、虫歯や歯茎の状態を調べ、装置の新たな調節をして、説明をして帰るまでにはどうがんばっても15分はかかると思います。それは相当スムーズに運んだとしての話ですので、多くの場合は30分近くかかると思います。
あまりにも忙しい医院ですと、一連の流れのどこかを省略して時間の節約をすることになります。忙しい医院というと人気がある医院に聞こえがちですが、そうとも言えません。忙しい=治療時間が少ない=待ち時間が長い と言う関係が成り立ちますので、バタバタ診療は患者様にとって決して良い環境とは言えません。忙しくて治療時間が短くなると、その日にやるべき事を省略しがちになるので、治療もなかなか進まなくなり、矯正治療を卒業する患者さんが少なくなると、ますます混んでくるという医院にとっても悪循環となってきます。予約診療にもかかわらず、30分以上待たされるのが常態化している医院は何か問題があるのかもしれません。
 

4. 相談と検査、診断の段階が明確に区別されている

初診相談というのは、あくまでも”相談”ですので、必ずしも治療を前提としていません。仮にご本人的には、かなり本気になっていたとしても、セールストークでそれをさらに焚きつけるなどと言うのは医療としてはどうでしょうか。キャッチセールスでよく行われる手法は、”相手に考える余裕を与えない”と言うことだそうですが、矯正治療のような高額なサービスは、冷静になって考える時間を取るべきでしょう。
ところがとにかく契約を成立させたい医院の中には、その場でレントゲンを撮ったりとか、せっかく来たんだしついでに検査もしましょう、みたいな相手に考える時間を与えないところもあるようです。
その場ではそれでよいかと思っても、後になって考え直すと違う選択もあったのではと思う場面が日常茶飯事ですね。検査や診断をその場で行うような医院は要注意と思います。
  

5. 治療に入る前の説明がきちんとしている

治療に入る前の最終的な説明のことを”診断”と言います。この中には、症状の説明とそれをどう治すかという具体的なプランが含まれています。治療前の最も重要なステップですので、患者様がきちんと理解してご契約されるよう(あるいは中止する)、十分な説明と同意が必要です。
この部分を曖昧にしたり、何もかもやってみないとわからないような説明ですと後々トラブルの元になります。患者様が納得できる説明をするのも矯正歯科医の腕の内とも考えられます。腑に落ちない理屈、とにかく任せなさいみたいな説明は要注意です。
 

6. 診断結果の資料、契約書などの書類を渡してくれる

診断の時に聞かされる内容は盛りだくさんですから、なかなか覚えきれるものではないですし、後で考えるとよくわからない点が出てきたりということも十分考えられます。話を聞いて契約書にサインはしたけれど、内容が確かめられないようでは将来的に不安が残ります。
きちんとした医院であれば、診断時に用意した書類はすべて複写を患者様に渡してくれます。どんな契約でも甲乙双方が同じ書類を保管しあうのが当たり前です。患者様が特に請求しなくてもこれらの書類を渡してくれるのが、当然と思います。
 

7. よく訓練された有資格のスタッフが居る

矯正歯科医院に限らず、よく訓練された歯科衛生士(歯科の看護師です)が常勤しているのは必須です。さらに矯正歯科医院では、筋機能訓練療法士という、舌や唇の筋肉の動きをトレーニングするスタッフが必須ですが、この資格を持っている歯科衛生士は数が少なく、養成には時間と費用がかかるので、医院によっては在籍していないところもあるようです。
とくに”開咬”という特殊な症状の治療には、筋機能訓練が必須なので、注意が必要です。スタッフが優秀でないと、せっかくの先生の腕もきちんと発揮できません。
 

8. 不要な検査をしない

いろいろな検査機器がそろっていると、それだけで最新の治療を受けているような気分になりますね。しかし、検査機器がそろっていると言うことと、それを使って不要な検査をし、検査費用を上乗せすると言うこととは区別しなければなりません。
たとえば、すべてのケースにCT撮影が必要かというと、決してそういうことはありません。通常検査で問題点が見つかった場合に精密検査に進むというのが道理であって、何もかも精密検査にするというのは、患者様にとって不都合が生じる可能性があります。良い医師は決して過剰な検査はしないものです。
 

9. 費用の明細がはっきりしていて妥当な金額である

矯正治療は自費です。保険治療のように国が定めた料金表というのがないわけです。ですので、患者様と歯科医師が合意すれば、5万円でも300万円でもかまわないわけです。しかし、何事にも妥当な価格というものがあります。一般的な矯正治療ですとおよそ70-100万円くらいではないでしょうか。明細を示さずに一式価格であまり高額な治療費を設定するのは要注意と思います。
 

10. 一般歯科との連携がきちんと出来ている

矯正歯科治療といえども、一つの歯科治療です。治療中には虫歯、歯肉炎、抜歯等、一般歯科医との連携が不可欠です。矯正歯科医院側で提携先をきちんと確保していないと、患者様は治療依頼状を持ってさまようことになりかねません。
信頼できる一般歯科医との連携治療がきちんと出来ている矯正歯科医院を探すというのも重要なポイントと思います。
 

<最後に 矯正は先生と患者様で作るアートです>

以上の項目をすべて満たしていても、相性が合わなかったり、全く別の視点で選びたくない状況も起きるでしょう。その場合は、やはりご自分のお気持ちを最優先にするべきです。矯正は、年単位の期間をかけて、先生と患者様の共同作業で作るアートのようなものですから、相性の合わない相手とは長期間組むことは出来ません。
逆に患者様も先生のアートが設計図通りにうまく完成するよう、最低限のマナーは守る必要があります。決められた治療間隔を守ったり、無断キャンセルをしないなどは、治療をスムーズに進める上で非常に大切なことです。
 
信頼できる矯正歯科医を見つけて、より美しくより健康になりませんか。